rakuen

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地球は温暖化が進み過ぎたという、そんなチンケな理由で終わったらしい。ガス爆発に近かった。圧力鍋の蓋を開けてしまったみたいに吹き飛んだのだ。四半世紀も引きこもっていた彼は、部屋ごと生き延びてしまった。

バスタブに乗って宇宙を進んで行くと、宇宙クジラと目があった。クジラの中には人が住んでいるらしく、不安そうな人々の様子が伺えた。クジラの目から涙が溢れて、彼のバスタブを満たすと水面に母親と父親の顔が浮かび上がる。

次に、隣に住んでいたみよちゃんの顔。彼がいつも窓から見てただけのみよちゃんの顔。彼女はいつも手を振ってくれた。ただそれだけだった。

金色のシャワーヘッドに「応答セヨ」と唱えると、バスタブは速度をあげて走り出した。宇宙空間よりうんと暗い何かに吸い込まれて抜けると、地球のような、懐かしい場所に降り立った。彼女の好きだった花が川沿いで咲いている。あたり一面紫色で、夏の蒸し暑さが残っているのに、狂い咲いている。

アヤメ、その花言葉は「メッセージ」「希望」という意味を持つ。

彼はその花をそっと摘み取ってバスタブに落とした。「応答セヨ」と魔法の言葉を唱えてまた暗闇に吸い込まれて行く。彼が生き延びた楽園から、もういないあの子を呼ぶ。辿り着けもしないのに。

待っててね。「待ってるよ。」聞こえてますか?「聞こえてますよ。」

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